被写界深度というのは、レンズを通して見た映像の、ピントが合っているように見える、奥行き方向の範囲のことである。
昨年、フォトマスター検定という試験を受ける為に勉強した中で、被写界深度を求める式が何故このようになるのかがわからず、気になっていた。
先月、フォトマスター検定について講義する機会があったので、そのネタとして、被写界深度の式を導いてみた。
図1
まず、被写界深度が何故存在するかというと、ピントが合っていない距離の点は点でなく丸になって映る(ボケる)が、その丸(錯乱円)が十分に小さいと、ほとんどボケてるように見えないからである。
その十分に小さい錯乱円の直径=許容ボケをδとすると、フィルム(デジカメだとセンサー)上のδに対応して、光軸上のフィルム/センサーの前後に、その範囲に焦点を結ぶとピントが合って見える範囲=焦点深度が存在する。
図2
この焦点深度の幅を2εとすると、F値(絞り値)=レンズ焦点距離(f)÷レンズ口径(Φ)を使って、f >> εなのでε/δ = F、すなわちε = Fδと近似できる。
この焦点深度に対応する、被写体側の範囲が、被写界深度である。
ここで、「ガウスの結像公式」(以下、単に「結像公式」)というのを用いる。結像公式とは、凸レンズからa離れた位置から発せられる光が、凸レンズを通って反対側のb離れた位置に焦点を結ぶ時、aとbの関係を、レンズ焦点距離fを用いて、
と表すものである。ちなみに、レンズの焦点距離とは、無限遠から来る光が焦点を結ぶ位置のことである。(上式でa=∞とするとb=fとなる)
この結像公式を用いて、焦点深度と被写界深度の関係を式にする。
図1のように、sをレンズから合焦位置までの距離、snを被写界の近点、sfを被写界の遠点、tをレンズからフィルム/センサーまでの距離とすると、
となる。これらの連立方程式を、tを消去して、snとsfについて解く。
(1)よりt=sf/(s-f)が得られるので、これを(2),(3)に代入すると、
が得られる。
ここで、s,f>>εなので、s±ε≈s, f±ε≈f, sf±ε2≈sfと近似できることを用いて、簡略化する。
これにε=Fδを代入すれば、被写界深度の近点と遠点を求める式になるのだが、フォトマスター検定の参考書では過焦点距離を用いた式になっているので、もう少し変形を進める。
過焦点距離とは、被写界深度の遠点が無限遠に届く、最短の撮影距離である。焦点深度と結像公式を用いて被写界深度の近点、遠点と同じ要領で、過焦点距離Hについても式を立てると、
となる。下の式からt=f+εが得られ、それを用いて上の式をHについて解くと、
すなわち過焦点距離=レンズ焦点距離2÷(絞り値×許容ボケ)と求まる。これを用いてsn, sfをさらに整理する。
従って、
被写界近点=(過焦点距離×合焦距離)÷(過焦点距離+合焦距離)
被写界遠点=(過焦点距離×合焦距離)÷(過焦点距離−合焦距離)
である。
なお、過焦点距離の計算には許容ボケが必要になるが、許容ボケは通常、フィルムやセンサーの対角線長÷1300、が用いられる。
35mmフィルムなら、√(362+242)/1300≒0.03328 (≒1/30) mm、
フォーサーズ/マイクロフォーサーズなら√(17.32+132)/1300≒0.01665 (≒1/60) mm、である。
ウチダタケシ
途中途中の運算で難しいところもあったが、なんとか導出計算は理解できました。レンズの法則はまだ消化不良なので、勉強します❗