瀬川さんの後

将棋界に留まらず話題になっているが、本日、プロ編入試験を受ける瀬川さんが見事合格を果たした。
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26歳までに4段という年齢制限の壁に阻まれて将棋界を去る元奨励会3段が多数居る中、ただ一人去った後プロに勝ちまくった瀬川さんだからこそ、例外的なプロ入りは全く自然のことだったと思う。何しろ、公式戦対プロ勝率7割だから、プロ棋士でも勝率トップ10に入る強さである。今回の試験でも、対男性プロ棋士に2勝1敗で、1敗はA級の久保8段につけられたものであるから、ひょっとするとB1クラスの実力はあるかも知れないのである。

近年、将棋界はプロとアマの差がどんどん縮まっていると言われているが、むしろ既にプロの底辺とアマのトップは逆転している印象があるが、瀬川さん以外の人が今後プロ入りを希望したら、どうなるのだろう。


プロ棋士の存在意義は、アマチュアより遥かに強くて、遥かに高度な将棋を見せる所にあると思う。
とすると、プロより強いアマチュアがごろごろ居ると、プロの存在意義が薄れるのである。
これまでの所、プロより確実に強いのは瀬川さん1人であったから、瀬川さんをプロにすれば、プロの存在価値が守れる。

しかし、今後はどうだろうか。
将棋人口は減っていると言われるものの、ネット対戦将棋を中心とするIT技術の威力により、アマトップの実力は飛躍的に向上している。将棋倶楽部24にはプロとアマが入り乱れており、プロでもR2400台で指している人が居ると聞いたことがあるが、R2500を越すIDは数百もある。その中にはプロや奨励会員も居り、複数のIDを使用する人も居るだろうが、確実にアマチュアも居るはずだ。公式戦で比較的弱いプロに勝つアマチュアがほとんど居ないが、これは強いアマチュアがそれほど公式戦に出ていないことによるものだと考えている。もしネット対戦で公式戦を行えば、プロをころころ負かすアマチュアが全国に最低10人、ひょっとすると50人くらい居るような気がしている。

さらに、奨励会の年齢制限によりアマに流出する実力者がどんどん増えるのである。新4段がほぼ例外なく快進撃することからわかる通り、今の奨励会3段は並のプロと互角なのだ。その3段の半数近くは、年齢制限で去っていく。もしその半数近くが鍛錬を続ければ、年1人は確実にプロ並みのアマチュアが増えるのではないだろうか。

1つの私のような素人の発想として、弱いプロはどんどんプロ失格にして、強いアマをどんどんプロにすればいい、と思うことがあるが、強いアマにもプロ棋士より他にする仕事があったりするし、プロ棋士の仕事も強くあることだけでは無いのである。

将棋に限らず、どんな競技でもプロの底辺を凌ぐアマチュアは存在するだろうが、将棋の場合は、プロより強いアマがごろごろ居ることが許されるだろうか。少なくとも私は、そうなったらプロ棋士は魅力半減だと思う。プロ棋士が見せるパフォーマンスはまずは盤上にしか無いのである。アマ将棋と大差ないプロ将棋を、お金を払って見ようとは思わない。

ついでに、近い内に、私が思うに10年以内に、全てのプロ棋士に勝ってしまうソフトが現れそうである。
今後、将棋のプロ棋士は強いアマ、強いソフトに対峙して、どう振舞うのだろうか。