4五歩早仕掛けの玉頭銀対策を考える

筆者はこの所、4五歩早仕掛けを多用している。長らく将棋の勉強を怠っており、対四間飛車の急戦はこれしか思い出せないのである。しかも、四間飛車に対して急戦の構えを見せると△4三銀と上がる人が多いので、実現しやすく、便利である。
図1:4五歩早仕掛け

今月、久々に将棋を指す機会があり、久々の4五歩早仕掛けがクリーンヒットして安心し、その次の対局でもまた4五歩早仕掛けをしたら、4三の銀を5四〜6五〜7六と斜めにスルスルと動かされ、対処できずボロボロに負けてしまった。
図2:6九金型の4五歩早仕掛けに対する玉頭銀

筆者は昔からこの△5四銀が苦手なのであるが、寡聞にして定跡書で見たことが無かった為、この手は無い手で、必ず咎められる手だと思っていた。それで、△5四銀とされれば▲5五歩から殺しにかかるのだが、成功することは5回に1回もない。(しかも、銀を殺せても良くなるとは限らない。)

玉頭銀を殺すイメージ図
図3:歩を入手して▲7七歩とできれば銀が死ぬ

図4

図5:次に▲6六歩で銀が死ぬ

図6:このままなら次に▲7七歩で銀が死ぬ

今回も銀を殺せず、悪形だけが残り、総崩れしてしまった。
あまりにもひどかったので、一度きちんと調べておくことにした。


【結論】
  • この△5四銀〜△6五銀〜△7六銀と動く戦法には「玉頭銀」という名前が付いているらしい。
  • 玉頭銀は6九金型の4五歩早仕掛けに対して特に有効とされているらしい。
  • 4五歩早仕掛けの1手前の▲4六歩は△5四歩を待ってからにするべきらしい。
  • 従って、▲6八金直△5四歩の交換を入れてからにするべきらしい。

しかし、▲6八金直の次に△5四歩とされるとは限らない。
▲6八金直の直後に△5四銀と玉頭銀で来られれば▲5五歩△6五銀▲7五歩〜▲2六飛の筋があるし、▲3五歩△同歩▲4六銀が速いので、玉頭銀の牽制になっているとは思うが、後手には△1二香や△6四歩など、色々な手がある。△6四歩〜△5四銀〜△6三銀引と堅められることも多い。それに対して、▲6八金直は有効な待ちなのだろうか?

筆者は人生で▲6八金直にいい思い出が無い。△8四桂〜△7六桂の両取りを狙われるし、下段が空くし、5七銀の引き場所が無くなるし、▲5九香の頑張りがあまり利かなくなる。

▲6八金直が得な手でなく、次に△5四歩や△5四銀が期待できないなら、やっぱり▲6八金直と待つのではなく、さっさと▲4六歩と突きたい。それでもし△5四銀を食らっても、正確に指されれば少し悪くなる、という程度に済ませる方法は無いだろうか、と思って、懲りずに6九金型で玉頭銀を食らった場合の対策を探してみた。


△5四銀の後は(1)▲3七桂、(2)▲3八飛、(3)▲5五歩の3通りが多いようである。

(1)▲3七桂の後は、△6五銀▲4五歩△7六銀▲2四歩△同歩▲4四歩
図7
△同角▲同角△同飛▲7七歩△8七銀成
図8
▲同玉△8四飛▲8六銀△6四角▲9七角△9五歩▲同歩△9六歩▲同玉△8六角▲同角△8五銀
図9
と玉頭銀の恐ろしさを一方的に見せつけられるのが、代表的な進行である。

▲4四歩△4四同角には▲7七歩が正解だと思われる。▲4四歩に△3五歩でも▲7七歩と打つことになるらしい。(1)の▲3七桂は、銀を取れないのに形悪く▲7七歩を打つことになることが多く、いまいちである。

ただ、▲3七桂△6五銀▲4五歩△7六銀の後、▲4四歩でなく▲4四角とする手があるらしい。
△同角▲同歩△同飛なら▲6六角として、△8四飛と回るのを防げる。
図10


(2)▲3八飛は、△3二飛なら▲5五歩△6五銀▲3五歩△同歩▲同飛△7六銀▲2四歩△同歩▲5四歩(図6)のように銀を狙えそうだが、図6からでも簡単には銀が取れない。△4五歩でも助かりそうだし、△6四歩▲6六歩△6五歩▲8六歩△6六歩▲同銀△6四歩とやっても後手がなんとかなりそうである。

▲3八飛には△4五歩とする人が多いと思う。その後、▲3三角成△同桂▲8八角△4三金▲2八飛に△6四角(山崎六段)
図11
という手があり、これは先手こらえるのが大変そうである。△6四角に▲2四歩と攻め合って先手良しとする本もあるが、筆者には先手良しと理解できなかった。

▲3八飛には何と△4三銀と戻る手もあり、▲3五歩△同歩▲同飛△3二飛▲4五歩△同歩▲4四歩△2二角▲4五飛
図12
と自然に進めても、△3四銀(谷川-藤井)でうまくいかない。


やはり筆者としては、△5四銀には勝ち負けを度外視してでも(3)▲5五歩としたい。
▲5五歩の後は△6五銀▲3五歩△同歩▲3八飛
図13
とする。
そこで△4三金だと、▲3五飛△3四歩▲3六飛△7六銀▲4五歩△6五銀▲7五歩△4五歩▲8六飛(図5)のように銀挟みが成功する筋がある。

図13から△4五歩だと、▲3五飛△4六歩▲4五歩△3四歩▲同飛△4五飛▲3七桂△4四飛▲同飛△同角▲4一飛
図14
が一例で、ここで△3五角なら後手良しらしいが、アマ同士なら先手もやれそうではないだろうか。

図13から△4五歩▲3五飛△4六歩▲4五歩に△7六銀とした実戦例(森下-櫛田)もあり、▲4六銀△9五歩▲同歩△9八歩▲同香△9七歩▲同香△9六歩▲同香△8五銀
図15
と端から大暴れされたが、▲3二歩の垂らしから、と金を作って先手が勝っている。

図13から△7六銀だと、正確に指されると後手良しらしいが、▲3五飛△6五銀▲6六歩△7六銀▲5四歩△同歩▲9七角
図16
という指し方もあるかも知れない。△3二飛なら▲2四歩△同歩▲2二歩である。


1筋の突き合いが入っていると、6九金型でも玉頭銀に対して別の対策があるかも知れない。

1つには、△5四銀に対して、▲5五歩△6五銀▲3五歩△同歩▲3八飛△7六銀▲3五飛△6五銀に▲1五歩(升田-大山)という定跡がある。
図17
以下△同歩▲3四歩△2二角▲2四歩△4三飛▲5四歩△同銀▲3三歩成△同飛▲同飛成△同角▲2三歩成△5一角▲2八飛
図18
で先手優勢である。

もう1つは、△5四銀に対して、▲5五歩△6五銀▲3五歩△同歩▲3八飛△4五歩▲3五飛△4六歩の後、▲3七桂△7六銀▲4五桂が成立する。
図19
1筋の突き合いが入っていないと、ここで△1五角があり、▲5四歩△同歩▲1一角成としても△3四歩で後手良しになるが、図19だと△3四歩か△2二角しかなく、△3四歩なら▲3三桂成、△2二角なら▲2四歩でいずれも崩壊ではないだろうか。
 
問題はどこで1筋の突き合いを入れるかだが、▲5七銀左と上がる前に入れている実戦例が、上記の升田-大山戦を含め複数あるので、そのタイミングが良いと思う。ただ、後手が玉頭銀で来ない場合にどういう影響があるかは未確認である。

■参考文献
最強将棋21 四間飛車破り【急戦編】渡辺 明(著)