筆者は、7月に精液検査というものをして、受精に繋がる精子がほぼ0という結果が出てしまった。
特に、受精の成功率に大きく関係するとされる、"PMSC A"の精子量が、下の表のように、0.0〜0.3×106/mlと極端に最低基準を下回っていたのである。
精液の質は日々の体調によって大きくばらつくので、結果が悪い場合は1ヶ月以内に再検査するのだが、それでも悪かった。
不妊治療(ART)では、自然妊娠がうまくできなければ、人工受精(AIH) → 体外受精(IVF) → 顕微授精(ICSI)、と順に「ステップアップ」する手段があるのだが、その最後の手段である顕微授精でも相当困難になるという、絶望的な数値であった。
男性不妊の原因の9割とされる「造精機能障害」である。
それから治療を続けた結果、半年でかなり改善したので、経緯を報告する。
検査項目 | WHOの 旧基準値 | WHOの 新基準値 | 検査日 | 単位 | ||||
2014/7/4 | 7/11 | 9/20 | 11/5 | 2015/1/17 | ||||
精液量 | 2.0以上 | 1.5以上 | 1.0 | 2.2 | 1.5 | 2.9 | 4.7 | ml |
精子濃度 | 20.0以上 | 15.0以上 | 12.5 | 9.4 | 1.7 | 17.7 | 83.0 | 106/ml |
運動精子濃度(MSC) | 1.4 | 1.6 | 1.3 | 9.0 | 44.8 | 106/ml | ||
高速前進(PMSC) A | 5.0以上 | 0.0 | 0.3 | 1.2 | 6.4 | 41.5 | 106/ml | |
低速前進(PMSC) B | 0.0 | 0.1 | 0.0 | 1.6 | 1.7 | 106/ml | ||
運動率(A+B+C) | 50以上 | 11.2 | 17.0 | 77 | 51 | 54 | % | |
運動率(A+B) | 40以上 | 0.0 | 4.3 | 71 | 45 | 52 | % | |
直進運動性 A | 25以上 | 0.0 | 3.2 | 71 | 36 | 50 | % | |
直進運動性 B | 0.0 | 1.1 | 0 | 9 | 2 | % | ||
直進運動性 C | 11.2 | 12.7 | 6 | 6 | 2 | % | ||
精子自動性指数(SMI) | 80以上 | 0 | 8 | ? | ? | ? |
7/11以前の検査は婦人科での検査。結果用紙の「高速前進(PMSC) A」が赤字(強調)であった。
9/20以降の検査は泌尿器科での検査であり、検査項目が少ない。
以前から、精力というか男性ホルモンが低下してるっぽい自覚症状はあった。
35歳くらいから、いわゆる朝立ちが全く無くなった。
勃起力も次第に弱くなり、38歳くらいからか、完全に勃起することがほとんど無くなった。
2回目の鬱病のピークが34歳の頃で、その頃から、性欲が急速に低下した。
心療内科で処方された薬の中には、EDを引き起こす可能性があるとされるもの(ジェイゾロフト)が含まれており、4年後の症状がほぼ無くなった頃に、その薬から服用を停止したが、その薬の影響が無くなるとされる2ヶ月が経っても、何も改善しなかった。
なお、1回目の鬱病のピークは29歳の時で、その時はジェイゾロフトは飲まなかった。
1年前から、EDの治療を意識し、泌尿器科に相談して薬剤を処方してもらったり、独自に様々な取り組みをしたが、改善は見られなかった。その流れで、婦人科にて精液検査を受けた結果、冒頭の「特発性造精機能障害」が判明し、再度、泌尿器科に相談した。
不妊症とは、医学的な定義としては、正常な性交渉を2年間継続して妊娠に至らなければそう診断されるものである。その内、男性に(も)原因があるものを、男性不妊症と呼ぶ。
(筆者の場合、性交渉に至っていないので、厳密には男性不妊症には当たらない。)
男性不妊の原因の9割が造精機能障害であり、6割は原因不明の「特発性造精機能障害」とされ(参考文献[1])、改善する為の確実な方法は知られていない。また、研究の結果、原理的に特効薬は無いことが確実とされている(参考文献[2])。
造精機能障害には、次のような種類がある。
- 乏精子症
- 精子濃度がWHO基準値未満
- 高度乏精子症
- 精子濃度が5×106/ml未満
- 無精子症
- 精子濃度が0
- 精子無力症
- 精子運動率がWHO基準値以下
(目安として、ある病院では、大体、精子濃度が20〜30×106/ml以下なら人工受精、3×106/ml以下なら体外受精、1×106/ml以下なら顕微授精が適当、という基準にしているらしい[1]。 婦人科の医師からは、タイミング法等によって自然妊娠を目指すには、精子濃度が40×106/mlはあることが望ましいと言われた。当然、大半の男性の精子濃度はそれを上回っているし、運動率も50%を上回っている。)
これらの内、無精子症以外の場合、まず行われるのは、漢方やビタミン剤(B12やC)の処方である[1]。 処方される漢方薬には、「補中益気湯」や「八味地黄丸」などがある[2]。- 補中益気湯
- 精子運動率の改善作用があるとされる。
- 八味地黄丸
- 精子数の増加作用があるとされる。
精子運動率が改善することもあるとの情報あり。
地黄というのがお腹に強烈らしく、腹痛を起こすこともある。
筆者は「乏精子症」と「精子無力症」に該当し、補中益気湯が処方された。
精子の形成は70日以上かかるので、漢方薬の服用は3ヶ月は続けるとのことだった。
それから、普段の生活で気を付けるべきこととして、以下を確認した。
- ストレスが大敵
- 適度な運動をする、但し股間を圧迫する自転車は好ましくない
- 股間を暖め過ぎない、膝上でのノートパソコン使用は良くない
- 喫煙は良くない
- 薬によっては影響することもある
- 禁欲期間は長過ぎないこと
- バランスの良い食事
これを受けて、7/19から補中益気湯を飲み始め、それから2ヶ月くらい、雨の日以外は毎晩欠かさず3km程度のウォーキングを行った。
ストレスは、仕事をセーブするなどして、軽減するように努めた。
膝上でのノートパソコンや喫煙は、筆者は元々していない。問題となった薬も既に停止していた。
コーヒーは特に関係ないとのことだったが、念の為、毎日800ccは飲んでいたのを、500cc程度に減らした。
食事については、参考文献[3]に、以下の栄養分が必要と書いてあった。
- ビタミンE
- ビタミンB12
- 亜鉛
- セレン
- アルギニン
なお、11月以降は寒くてウォーキングを中断したが、しばらくすると勃起力が下がった実感があり、少し再開するとすぐ回復した感じがした。運動の有無が調子を大きく上下させると感じたので、週末の昼間になるべく3kmくらいは歩くようにした。
その結果、2ヶ月後のデータは運動率から改善したと読んで良いかどうかわからない(この時だけ精子濃度が極端に低いので、検査対象の採取に問題があった可能性がある)が、4ヶ月後には精子濃度、運動率共に、WHOの新たな最低基準値を上回り、6ヶ月後には造精機能障害を脱したと言える水準まで回復した。
なお、精液検査の費用は、某婦人科では1回1万円以上だったが、某泌尿器科では保険適用(3割負担)で数百円だった。
◆参考文献
[1] 「カップルで治す男性不妊」,吉田 淳 (著),主婦の友社
[2] 「男性不妊症」,石川 智基 (著),玄冬社
[3] 男性不妊について考える 妊娠・不妊情報サイト 妊娠したいネット
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