発想法というもの

最近、TRIZという単語をよく目にする。今日も目にしたので、何かと思って調べたら、発想法の1つらしい。

発想法といえば、有名なのはブレーンストーミングとKJ法だと思う。私も多分に漏れず、それらに接してきたというか、それらに接する羽目になってきたのであるが、正直言って、それらの発想法の効果を実感できた試しがない。どうも、それらを使うことが賢いやり方だという共通認識が、無根拠に出来上がっている気がする。ついでに、「KJ法はいいよ」みたいに、使いこなしてる風に言うとカッコいい、ということがあるような気がする。

調べてみると、発想法というのは他にも色々あるようだ。
http://www.product.tuad.ac.jp/robin/Jpn/lecture/idea.htmより引用:

「ブレーンストーミング法、KJ法、マトリックス法、クロス法、7×7法、OCU法、図書分類、チェックリスト法、フローチャート法、因果分析法、特性要因 図、関連樹木法、デシジョンツリー法、PERT法、ブロック法、ストーリー法、 シナリオ法、ハイブリッジ法、ワークデザイン法、ZK法、自律訓練法、カウン セリング法、イメージコントロール法、TA法、ヨーガ、禅、等価変換理論、水平思考法、ゴードン法、Uターン思考法、欠点列挙法、希望点列挙法、属性列挙 法、非分割結合法、形態分析法、分割結合法、飛躍結合法、QC法、パラダイム 発想法、ST(感受性訓練)、チーム発想法、シネクティックス、入出法(イン プット、アウトプット法)、SET法(記号画展開思考)、NM法、ノミナルグ ループ手法、ブレインライティング(635法)、TRIZ、ピン・カード法、 アルファベットシステム、ワードダイヤモンド、焦点法、デルファイ法、バイオ ニクス、パート法、KT法(ケプナー・トリゴー法)、システムアナロジー、逆 設定法、モホロジカル分析、コンフロンテーション(対比技法)、擬物化法、デ ルファイ法、ポジショニング法、トリムシ法、LISA(ライフスタイルアナロ ジー)、座標図法、SAMM法、フィリップス66法…」

効果が理論的に説明できる必要が無く、効果が出なくても「使いこなしてないからだ」と言い逃れできるので、作り放題ということだということが窺い知れる。

2005年の日経BPのコラムによると、この中でよく知られており、よく使われている上位5つは、ブレーンストーミング、KJ法、KT法、TRIZ、NM法だということだ。TRIZは後発のため、今後順位を上げていくのだろう。

それぞれについて、特徴や手順の概要を説明してみる。
・ブレーンストーミング:あまり多くない人数で、批判禁止、突飛な意見歓迎で、ひたすらアイデアを出し続ける。出したアイデアが他者を刺激するという効果だけでアイデアを広げようという方法。
・KJ法:無秩序なデータを直感的に空間配置して整理し、データに隠された情報を見つけようとするもの。
・KT法:意思決定者のための、合理的な解を導く論理的な思考法で、プロセスとワークシートからなる。詳細不明。研修やセミナーで高い金を取るネタらしい。
・TRIZ:過去の特許から技術的な発明の法則をまとめたもので、問題を様々なプロセスにより変換し、解決パターンを当てはめて変換後の問題を解き、元の問題の解を得るという感じの方法。
・NM法:問題解決のための思考プロセスを定式化したもの。いくつかのパターンの類推を決まった手順で行う。実行者の類推力が勝負。


これが決定版、というのが無いことからも、さほど便利と呼べるものではないようだ。複数人で共通の思考プロセスを踏む目的で使うか、思考に苦しむ人が駆け込み寺として使うものではないだろうか。

そもそも、発想法というものは人が自然にやっている思考パターンの一部を規則化または法則化したものと考えられる。そういうパターンで思考する習慣が無ければ、参考になるものだとは思う。
しかし、あくまで人の思考パターンの一部であるから、人が自然に行う思考過程の方がずっと複雑なのだ。ずっと複雑なプロセスで思考できるということは、より優れた思考ができるということだ。ある問題に対して効率よく良い解を出す、汎用的な問題向けにパターン化できない複雑な思考プロセスが存在するからだ。思考プロセスを単純化した方が良い場合もあるだろうが、それが常に成り立つとは思えない。
それに、借り物の思考パターンより、慣れた自分なりの思考法の方が楽に実践できるということもあるだろう。
発想法というものに縛られるのでなく、発想法というものでも使わないと考える事ができなくなった時にヒントを求めて使えばいいものという気がする。
もし思考力自体の向上を目的として発想法を学ぶなら、ある発想法をマスターすることが賢いのではなく、発想法は思考プロセスのごく一部のパターンにしかなり得ないことを意識して、発想法を参考にして自身の思考プロセスを改善することを考えるのが、本来は望ましいという気がする。


●参考リンク
・TRIZ
大阪学院大学内のページ
産能大学内のページ
・その他
「発想法」について --- Ideationの文書(PDF)


今日、TRIZちょっと真面目に理解してみようと思って調べ始めたが、どうやら知るべき事柄の分量が多いようので、今日は諦めることにした。でも、近い内に仕事で使わされそうなので、いずれ勉強する必要がありそうだ。

ところで、発想法の中で私が最も興味があるのは、上記の日経の記事にも書かれている、マインドマップだ。単純に書くと、脳内の情報を連想を頼りに図面化していく方法であるが、色使いや線を太くするルールに特徴があり、できる図面が人間の視認の特性に合っており、次なる発想をかき立てるのに適しているという気がするのだ。
昔、NetNewsで推薦している人がいて、何回かやってみたことがある。結局、現実の課題を題材にすると役に立つ図が描けなかったが、練習すればましな図が描けそうな気がした。しかし、かなりの練習と慣れが必要な感じはした。エディタで言うとvi、ブラウザで言うとSleipnir、プログラム言語で言うとPerlのような、玄人向けのツールなのかも知れない。
なお、マインドマップは単に情報共有や情報整理にも使えるという人も居るが、私はそれはあまり信用していない。あれが整理された情報だと思える人は決して多いとは思わないし、そもそも情報とそれらの簡単な繋がりしか書かないので、それに至る思考の過程や、深い思考を表現するのには適していないと思う。情報整理に使うとしても、考えている内に迷子にならないためのガイドマップ程度ではなかろうか。

●マインドマップ関連リンク
mindmap.jp
Wikipedia
JCU Study Skills Online
Peter Russel's "The Spirit of Now"